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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme

Aozora Bunko

――あんなにまで、昼には後悔して、早々に藤夜叉の身は三河へ返してやれ、と言っていたかと思うと、たちまちに、これである。

陰森な、何か、やりきれないほどな、短くて長い気のする刻々が過ぎている。……ケロ、ケロロ、と池の初蛙もまた啼きだしていた。

主膳は立ちしびれた。

けれど、いくら佇んでいても、離亭の内は、それきり何の気配もしない。すべてはそれで終ったように感じられる。それはマナ板にのせられた一個の白い女体が、あの異常な閨技をほこる主君のうでに、思うさま分解され変質されているような光景を彼のあたまに執こく染めていたのだった。――だが主膳は、そういう目にあった幾人もの女が、やがてはみな主人の局に、生け簀の美魚のごとくよろこんで飼われているのを眼に見てきた。女とはそういうものかと、今夜も思わざるをえなかった。

すると、ほどへて、

「おや?」

とつぜん、彼は庭をななめに走って、池尻の木蔭に、身をかがめていた。

「……藤夜叉か」

彼が耳にしたのは、離亭の裏かと思われる辺に聞えた二度目の異様な響きで、とたんに、鹿のような迅い影が、築山の笹叢を突いてどこかへ消えていたのである。