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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme

Aozora Bunko

――加賀田まで、わずか小二里。すぐまいれ。……否というなら、そちも勘当する。まいらぬか、爺っ」

「ぜひもござりませぬ」

爺は首を垂れた。――勘当も辞さぬ反抗かとみえたが、やはり老臣は老臣、

「……行てまいりまする」

と、やっと腰をあげた。

「刑部どの。すまんが、弟をはじめ気負い立った若者ばらのこと、爺の説得だけでは心もとない。加賀田まで、お辺も共に、一ト鞭あててくれまいか」

ふたりを、そうして急がせた後で、正成は独りふかい思いに沈んだ。一族のたれよりも、一世の鳴動は、彼のおもてを深刻なものにしている。それを聴く心耳を持たない正成ではない。

「……お。多聞丸か」

ふと、後ろから抱きつかれた小さい手をにぎって、彼は、父の笑顔を振り向けた。

「柿ムキをやっていたのか。多聞丸、黒い指だなあ」

「お父さま、いま御門の外へ、きれいな女の客人が来ましたよ。笠を持った旅の女のひとが」

「ほ。女の旅人が来たと?」

「ええ、御門へ」

「いや、よう下屋門へ来る販ぎ女(物売り)であろ。……多聞丸、まあそこへ坐れ」

「なんです、お父さま」

「毎日、勉強に通っているか」

「います」

「今日はなぜ休んだ?」