Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
「正季はそういったろうが、この父はな、ほんとのところは悔いている。ほかにしてよい学問はたくさんあった。それもせずに、なぜ兵学一途にあの頃は夢中になって通ったろうか。……時親先生は偉いお人に相違ないが、なにか人界の外にあって妖しく光る不気味な凶星みたいなお方でもあってな。……あの山荘に集う若者は、みな先生の魅力にとり憑かれてしまう」
「そう?」
「そうなのだ。それに憑かれてわしも一心不乱な頃、夜道の戻りに、加賀田川の崖ですべッて、これこの通りソギ竹で右の眼を悪うしてしもうた。これだけが身について残ったものだ。兵学などは、身にとっても人にとっても、いちども益となったことはない。……だからの」
ふと、正成はその右眼のわるい横顔を振り向けて、細殿の小暗がりを来る白い顔を待って言った。
「久子か」
「はい、久子でございます。めずらしいお方がただいま御門へ見えられました。卯木さまと仰っしゃるお妹さまが」
「え、卯木が来た?」
「これへおつれいたしましょうか」
「ま、まて」
正成はむずかしい顔いろを、俄に沈めた。
「……折さえあるに」
久子を待たせておいたまま、正成は考えこむ。