Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
そう思うてのお悩みでございましょうが」
「そうだ、いやわし自身とて、そなたたちといつまでもこう平和にいたいわ」
「けれど、武門の常、その御悲願もかないませぬ。……それでわたくしたちを離別し、おこころおきのうお覚悟に就こうお胸でございましょうが」
「されば一族はじめ末々の輩からその家族まで、みなわしの肩にかけられている者だ。身一つの覚悟などで、正成の臍が決められようか。……で、まずわが妻子から離別してとは、考えられた。……久子、遠慮なくいえ、愛情とはべつだ、そなたがその方を望むならば」
「むごい仰せ。久子に死ねと仰せあるのもおなじです」
これまでの年月に、良人も知っていなかった彼女の気性の一端が言い切った。涙の乾いた皮膚の下から曙いろがさしている。こんな事態でもなければ生涯覗くまい心の扉がいま久子の内部に開きかけていた。
正成はそれを見とどけた。
「いやもう問わぬ。久子、前言はとり消す。なおまだ、一族どもの心底をたしかめねば相ならぬが、いずれにせよ、吹きつのッて来た金剛颪し、この屋の棟もあらしの外には措かれまい。何事があろうと、驚くな」
「驚きますまい。なみならぬ世は女にもわかりまする。