Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
さんざんな敗北となった残余の勢を退きまとめて、主将の赤橋守時は、悽愴な味方の者の影にかこまれていた。
「小市か」
守時は、人なき木蔭に腰をおろして、
「こころ待ちにしていたぞ。女どもはみな無事か。それとも、そちが来たのは、なにか異変か」
と、たずねた。
紀ノ小市丸は、千寿王の侍童で、また紀ノ五左衛門の孫でもある。だから元々は、大蔵屋敷の者だが、登子の身が実家方預けとなったとき、共に赤橋家へ移って行き、今なお、登子のそばから離れてはいないのだった。
一書を遺して、
良人の罪をわびて、
妹は自害いたしました。
と、守時は先に執権の前でも答え、そとにもそう信じさせてきたが、まことは、幾人かの侍女老女に、紀ノ小市を付けて、密かに、他へ身を隠せと、追いやっていたものだった。
おそらくそこには、他人には想像もしえない涙と涙の顔で、愛情にもとづく言い争いもあったであろう。兄を死地に立たせてまで生きようとしない登子であったにはちがいない。けれどそれを叱ッて、鬼のごとく叱ッて、しいて登子を谷の隠れ穴へ追いやったのち、身の出陣を、高時の前へ、願い出ていた守時だった。
「ご無事でいらっしゃいます。