Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme
元成は、そういって、ふと草心尼の顔へ、訊ねた。
「柳斎どのは、以前からの、具足師ではないようですね」
「ええ、武家です」
「どうも、そうだろうと思っていました。物腰やら、あの眼底」
「ほかならぬ、あなた方なら、打ち明けてもよいでしょう。……柳斎とは、仮の名。まことは、足利殿に仕えて、高氏さまの傅役をも勤めていた一色右馬介という侍です」
「ほ? そのような武士が、なんでまた」
「深いわけは存じませぬが、高氏さまのお勘気にふれ、数年前に、鎌倉表から姿を消して、この住吉辺にいるということだけは聞き知っておりました。……けれど本心、町家者になりきッたとも思われません。それに、折ふし都の変。……この尼の想像ではございますが、お夫婦の前に、あの右馬介が、柳斎として、再び姿を見せることは、よも、あるまいと存じまする。……どうぞ、そこをおふくみなされて、あなた方も、身の落着きを他にお求めなされませ」
ほどなく、空は白みそめ、彼方の難波通いの船場に集う客や船頭の高声がし出している。
「では元成さま、卯木さま」
「オ、はやお別れですな。尼前にもごきげんよう。覚一どのも、しっかりご勉強なされませよ」