Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こうもうけいせい

紅毛傾城

小栗 虫太郎

Lesen Sie 紅毛傾城 (こうもうけいせい) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.403 Zeichen · 50 Bildschirme

Aozora Bunko

冷たい風が、どこからとなく隙をくぐって、ともすると消されがちな、角燈を揺らめかしているのでしたが、私は、なんのことなく椅子にかけていて、いつか通り過ぎた、シベリアの村々を夢見ておりました。すると、霧が細かい滴となってかかる、ガラス戸の向こうに、それはおそろしいものが現われたのです。

どす黒い、斑点のある、への字形に反りかえった腕が、格ガラスの右端から現われて、今にも、ハンドルに手をかけようとするのです……おお、父はよみがえったのでした。どうあっても、あんな片輪めいた、反り腕の男など、乗組員の中には一人としていないのですから。そう思うと私は、頭の中の血が、サッと心臓に引き揚げたように感じて、クラクラと扉によろめきかかりました。そして、呼吸を落ち着け、しっかりしようと努力しながら、扉に当てた椅子に、いつまでかじりついていたことでしょう。

しかし、父の腕は、その瞬間限り消えてしまいましたけれど、ふとそれにつれて、私の胸にギスリと突き刺さったものがありました。というのは、海に乗り出すと間もなく、船内に、それは得体の知れない、悪疫がはびこってきたからでした」