Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 226.715 Zeichen · 431 Bildschirme
それでも家を出た時分には人顔がぼんやり見分けられる程度であったが、蛍が出ると云う小川のほとりへ行き着いた頃から急激に夜が落ちて来て、………小川と云っても、畑の中にある溝の少し大きいくらいな平凡な川がひとすじ流れ、両岸には一面に芒のような草が長く生い茂っているのが、水が見えないくらい川面に覆いかぶさっていて、最初は一丁程先に土橋のあるのだけが分っていたが、………蛍と云うものは人声や光るものを嫌うと云うことで、遠くから懐中電燈を照らさぬようにし、話声も立てぬようにして近づいたのであったが、直ぐ川のほとりへ来てもそれらしいものが見えないので、今日は出ないのでしょうかとひそひそ声で囁くと、いいえ、沢山出ています、此方へいらっしゃいと云われて、ずっと川の縁の叢の中へ這入り込んで見ると、ちょうどあたりが僅かに残る明るさから刻々と墨一色の暗さに移る微妙な時に、両岸の叢から蛍がすいすいと、すすきと同じような低い弧を描きつつ真ん中の川に向って飛ぶのが見えた。………見渡す限り、ひとすじの川の縁に沿うて、何処迄も何処迄も、果てしもなく両岸から飛び交わすのが見えた。………それが今迄見えなかったのは、草が丈高く伸びていたのと、その間から飛び立つ蛍が、上の方へ舞い上らずに、水を慕って低く揺曳するせいであった。