Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 226.715 Zeichen · 431 Bildschirme
来年は三十五になるやないの」
「左様なら、―――そしたら又」
階段の下で待っていた雪子は、玄関で姉にそう云うと、幸子より先に逃げるように戸外へ出た。
「左様なら。こいさんに宜しく」
姉も往来へ送って出て、車の傍に立ち添いながらしゃべりつづけた。
「井谷さん洋行しやはるのんやったら、あたしもちょっと挨拶に出んと悪いか知らん」
「そないせんかてええやないの、姉ちゃんは会うたことないねんさかい」
「けど、東京に来てはることが分ってて、顔出しせえへんのんもどうやろうか。………出帆は何日やのん」
「廿三日と聞いてるけど、派手なことが嫌いで、見送りは一切辞退する云うてはるねん」
「ホテル迄でも行って来ようか」
「それには及ばんと思うけど、………」
幸子は、運転手がエンジンをかけている間、姉と車の窓を隔ててこんな会話の遣り取りをしたが、姉がその時しゃべりながら涙をぽろぽろこぼしているのに心付いた。幸子には井谷の話がこの涙とどう云う関係があるのだか、奇異な感じがするのみであったが、姉の眼からは自動車が動き出す迄、しきりなしに涙が流れつづけていた。
「姉ちゃん、泣いてはったわな」
と、道玄坂を過ぎた時分に、雪子が云った。