Japanische Klassiker mit Furigana
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ちゅうどく
聴雨・螢 織田作之助短篇集
織田 作之助
Lesen Sie 聴雨・螢 織田作之助短篇集 (ちゅうどく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.162 Zeichen · 37 Bildschirme
しかし、寿子の眼は不思議に、冷たく冴え返っていた。その眼の光は、父親の庄之助でさえ、何かヒヤリと感ずる程であった。一皮目の切れの長いその眼は、仮面の眼のようであった。虚無的に迫る青い光を、底にたたえて澄み切っているのである。月並みに、怜悧だとか、勝気だとか、年に似合わぬ傲慢さだとか、形容してみても、なお残るものがある不思議な眼だった。
ところが、憑かれたように、バッハのフーガを繰りかえして弾いているうちに、さすがに寿子の眼は血走って来た。充血して痛々しいくらいである。おまけに、夜更けとともにおびただしく出て来た蚊は、寿子の腕や手や首を、容赦なく刺すのだった。
「可哀想に……」
という身を切られるような想いが、さすがにちらと庄之助の胸をかすめたが、しかし、彼は依然として、寿子を蚊帳の中へ入れようとせず、また、「出来た」とも言わなかった。
そのような庄之助の冷酷さを見ると、さすがの礼子も、寿子にふと同情の念を催すくらいであった。
「しかし、寿子も寿子だ」
と、礼子はまた思った。今夜はもうこの位で勘弁してくれと、頼めばよさそうなものだのに、頑として蚊帳の外に頑張っているその依固地さは、十や十一の少女とは思えなかった。