Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はなさかぬリラ

花咲かぬリラ

山本 周五郎

Lesen Sie 花咲かぬリラ (はなさかぬリラ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.378 Zeichen · 36 Bildschirme

Aozora Bunko

九

「面会時間は三十分に限られております」と、尼僧が云った、「……それからこの扉は明けたままにしておいていただきます」そして足音もなく去っていった。

九

二人はテーブルを挾んで相対した。来太は貪るような眼で富美子を見た、彼女は帽子とも被衣ともつかぬものを頭から衣ていたが、ちらとこちらを見たまますぐうつむいてしまった。すっかり痩せていた、豊かだった頬は蒼白い蝋のような色になり、面長な顔がさらに細くやつれが眼だつ、それは彼女がどんなに苦しんだかを証拠だてるもののようだった。

「帰ってきました」来太はしずかにそう云った、「……そしてこれから北海道へ帰り、いつか話した酪業農場の経営を始めます、どうかすぐその手続きをとって僕といっしょに来てください」

「……わたくし、まいれません」富美子はなにか物が喉につかえてでもいるような、乾いた嗄れた声で呟やくように答えた、

「……お願いします、どうかわたくしのことはお忘れくださいまし」

「僕の眼を見たまえ」来太は命令するように云い、両手をテーブルに突いて半身をぐいと前へ乗り出した、「……そして理由を聞こう、それだけの権利は僕にあるはずだ」