Japanische Klassiker mit Furigana
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はなさかぬリラ
花咲かぬリラ
山本 周五郎
Lesen Sie 花咲かぬリラ (はなさかぬリラ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.378 Zeichen · 36 Bildschirme
四
「結構だ、しかし隊長はもうよそう」来太は吉村家で借りて着た背広の前を寛ろげながらそう云った、「……それから僕はちょっと眠るからな、二時間ばかりたったら起こしてくれ、話はそれからだ、頼むぞ」そして腕組みをして後ろへもたれながら眼をつむった。五人の青年たちはそれで一斉に黙った、彼らは二十五六から三十くらいまでの年ごろで、服装も持物も、そして日焼けのした、けれども憔悴の色の隠せない顔つきも、共通した「帰還兵」の特徴をもっている。だがきわめて注意を惹くことは、彼らがそろって明るく、元気にあふれていることだった、そしてそれは来太を中心に結び合うところから発するもののようにみえる、……彼らはいま互いに躰を寄せ合い、来太の眠りを護るかのように沈黙した。
四
戦場生活をした者は思考のテンポが速い、一瞬間に何十年かの過去を回想する機会に馴らされてるからである。来太は眠ろうとして眼を閉じたが、睡気のくるまえにかずかずの幻像が習慣のように意識の面をかすめ去った。……戦場の思い出はもう遠かった、原隊で解除になり、五人の旧部下を集めて北海道にある故郷へ帰農することに決定したとき、すでに戦争という事実は切り捨ててある、今ではむしろそれ以前の生活のほうが身近になまなまと感じられるのだった。