Japanische Klassiker mit Furigana
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はなさかぬリラ
花咲かぬリラ
山本 周五郎
Lesen Sie 花咲かぬリラ (はなさかぬリラ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.378 Zeichen · 36 Bildschirme
夫人は頭を傾けながら云った、「……急に長瀞へ帰るからとお云いなすって、まるで鳥が立つようにすっと帰っておしまいになったんですよ」
「すると今は長瀞にいるわけですか」
「ええそうでしょう」夫人はちょっと云いにくそうに口ごもった、「……多分お家にいらっしゃるでしょうと思いますけどね」
「とおっしゃるのは、なにか変わったことでもあったんですか」
「由利さん」夫人は娘をかえり見た、「……あなたおビールを持っていらっしゃい、時間がないっておっしゃるんだからせめて喉でも湿していっていただきましょう」
「損だわねえ、すぐ帰る人になんか」来太をにらみながら由利は立った、「……お肴は、お母さま」
「ピーナツがあるでしょう」
わあますます損だと云いながら由利が去ると、夫人は少し声を低くしながら、
「去年の十月でしたわ、富美子さんから私にお手紙がありましたの、そのなかに近いうちお家を出て新しい生活にはいる、くわしいことは後から知らせるという意味のことが書いてありました」
「新しい生活とはなんのことなんです」
「それがそれっきり手紙がないのでわからないんですよ、まだお家をお出にならないのかとも思うし、それともお出になって……」