Japanische Klassiker mit Furigana
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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
Lesen Sie 花火・来訪者 他十一篇 (あぢさい) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.046 Zeichen · 104 Bildschirme
両国橋には不朽なる浮世絵の背景がある。柳橋は動し難い伝説の権威を背負っている。それに対して自分は艶かしい意味においてしん橋の名を思出す時には、いつも明治の初年に返咲きした第二の江戸を追想せねばならぬ。無論、実際よりもなお麗しくなお立派なものにして憬慕するのである。
現代の日本ほど時間の早く経過する国が世界中にあろうか。今過ぎ去ったばかりの昨日の事をも全く違った時代のように回想しなければならぬ事が沢山にある。有楽座を日本唯一の新しい西洋式の劇場として眺めたのも、僅に二、三年間の事に過ぎなかった。吾々が新橋の停車場を別れの場所、出発の場所として描写するのも、また僅々四、五年間の事であろう。
今では日吉町にプランタンが出来たし、尾張町の角にはカフェー・ギンザが出来かかっているし、また若い文学者間には有名なメイゾン・コオノスが小網町の河岸通りを去って、銀座附近に出て来るのも近い中だとかいう噂さである。しかしこう云う適当な休み場所がまだ出来なかった去年頃まで、自分は友達を待ち合わしたり、或は散歩の疲れた足を休めたり、または単に往来の人の混雑を眺める為めには、新橋停車場内の待合所を選ぶがよいと思っていた。