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Japanische Klassiker mit Furigana

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かつしかみやげ

荷風随筆集(上)

永井 荷風

Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme

Aozora Bunko

私の生れた小石川には崖が沢山あった。第一に思出すのは茗荷谷の小径から仰ぎ見る左右の崖で、一方にはその名さえ気味の悪い切支丹坂が斜に開けそれと向い合っては名前を忘れてしまったが山道のような細い坂が小日向台町の裏へと攀登っている。今はこの左右の崖も大方は趣のない積み方をした当世風の石垣となり、竹藪も樹木も伐払われて、全く以前の薄暗い物凄さを失ってしまった。

まだ私が七、八ツの頃かと記憶している。切支丹坂に添う崖の中腹に、大雨か何かのために突然真四角な大きな横穴が現われ、何処まで深くつづいているのか行先が分らぬというので、近所のものは大方切支丹屋敷のあった頃掘抜いた地中の抜道ではないかなぞと評判した。

この茗荷谷を小日向水道町の方へ出ると、今も往来の真中に銀杏の大木が立っていて、草鞋と炮烙が沢山奉納してある小さなお宮がある。一体この水道端の通は片側に寺が幾軒となくつづいて、種々の形をした棟門を並べている処から、今も折々私の喜んで散歩する処である。この通を行尽すと音羽へ曲ろうとする角に大塚火薬庫のある高い崖が聳え、その頂にちらばらと喬木が立っている。崖の草枯れ黄み、この喬木の冬枯した梢に烏が群をなして棲る時なぞは、宛然文人画を見る趣がある。