Japanische Klassiker mit Furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
されば東京の都市に夕日が射そうが射すまいが、富士の山が見えようが見えまいがそんな事に頓着するものは一人もない。もしわれらの如き文学者にしてかくの如き事を口にせば文壇は挙って気障な宗匠か何ぞのように手厳く擯斥するにちがいない。しかしつらつら思えば伊太利亜ミラノの都はアルプの山影あって更に美しく、ナポリの都はヴェズウブ火山の烟あるがために一際旅するものの心に記憶されるのではないか。東京の東京らしきは富士を望み得る所にある。われらは徒に議員選挙に奔走する事を以てのみ国民の義務とは思わない。われらの意味する愛国主義は、郷土の美を永遠に保護し、国語の純化洗練に力むる事を以て第一の義務なりと考うるのである。今や東京市の風景全く破壊せられんとしつつあるの時、われらは世人のこの首都と富嶽との関係を軽視せざらん事を希うて止まない。安永頃の俳書『名所方角集』に富士眺望と題して
名月や富士見ゆるかと駿河町 素竜
半分は江戸のものなり不尽の雪 立志
富士を見て忘れんとしたり大晦日 宝馬
十余年前楽天居小波山人の許に集まるわれら木曜会の会員に羅臥雲と呼ぶ眉目秀麗なる清客があった。