Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
焼跡の空地に生えた雑草を除けば、目に映ずる青いものは一ツもない。震災後に開かれた一直線の広い道路と、むかしから流れている幾筋の運河とが、際限なき焦土の上に建てられた臨時の建築物と仮小屋とのごみごみした間を縦横に貫き走っている処が、即ち深川だといえば、それで事は尽きてしまうのである。
災後、新に開かれたセメント敷の大道は、黒亀橋から冬木町を貫き、仙台堀に沿うて走る福砂通と称するもの。また清洲橋から東に向い、小名木川と並行して中川を渡る清砂通と称するもの。この二条の新道が深川の町を西から東へと走っている。また南北に通ずる新道にして電車の通らないものが三筋ある。これらの新道はそのいずれを歩いても、道幅が広く、両側の人家は低く小さく、処々に広漠たる空地があるので、青空ばかりが限りなく望まれるが、目に入るものは浮雲の外には、遠くに架っている釣橋の鉄骨と瓦斯タンクばかりで、鳶や烏の飛ぶ影さえもなく、遠い工場の響が鈍く、風の音のように聞える。昼中でも道行く人は途絶えがちで、たまたま走り過る乗合自動車には女車掌が眠そうな顔をして腰をかけている。わたくしは夕焼の雲を見たり、明月を賞したり、あるいはまた黙想に沈みながら漫歩するには、これほど好い道は他にない事を知った。