Japanische Klassiker mit Furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
風は沈静して、高い枯草の間から小禽の群が鋭い声を放ちながら、礫を打つようにぱっと散っては消える。曳舟の機械の響が両岸に反響しながら、次第に遠くなって行く。
わたくしは年もまさに尽きようとする十二月の薄暮。さながら晩秋に異らぬ烈しい夕栄の空の下、一望際限なく、唯黄いろく枯れ果てた草と蘆とのひろがりを眺めていると、何か知ら異様なる感覚の刺※を受け、一歩一歩夜の進み来るにもかかわらず、堤の上を歩みつづけた。そして遥か河下の彼方に、葛西橋の燈影のちらつくのを認めて、更にまた歩みつづけた。
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葛西橋は荒川放水路に架せられた長橋の中で、その最も海に近く、その最も南の端れにあるものである。
しかしそれを知ったのは、家に帰って燈下に地図をひらき見てから後のことで。その夕、船堀橋から堤づたいに、葛西橋の灯を望んだ際には、橋の名も知らず、またそこから僅四、五町にして放水路の堤防が、靴の先のような形をなして海の中に没していることなどは、勿論知ろうはずがなかった。
夜は忽ち暗黒の中に眺望を遮るのみか、橋際に立てた掲示板の文字さえ顔を近づけねば読まれぬほどにしていた。