Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かつしかみやげ

荷風随筆集(上)

永井 荷風

Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme

Aozora Bunko

向島

隅田川の水はいよいよ濁りいよいよ悪臭をさえ放つようになってしまったので、その後わたくしは一度も河船には乗らないようになったが、思い返すとこの河水も明治大正の頃には奇麗であった。

その頃、両国の川下には葭簀張の水練場が四、五軒も並んでいて、夕方近くには柳橋あたりの芸者が泳ぎに来たくらいで、かなり賑かなものであった。思い返すと四、五十年もむかしの事で、わたくしもこの辺の水練場で始めて泳ぎを教えられたのであった。世間ではまだ鎌倉あたりへ別荘を建てて子弟の遊場をつくるような風習がなかった。尋常中学へ這入って一、二年過ぎた頃かと思う。季節が少し寒くなりかかると、泳げないから浅草橋あたりまで行って釣舟屋の舟を借り、両国から向嶋、永代から品川の砲台あたりまで漕ぎ廻ったが、やがて二、三年過るとその興味も追々他に変じて、一ツ舟に乗り合せた学校友達とも遠ざかり、中には病死したものもあるが、月日と共にその名さえ忘れてしまって、思出すことさえできないのがある。

その頃わたくしの家は生れた小石川から飯田町へ越していたので、何かの折、その辺を歩き過る時、ぽつりぽつりと前後なくその頃の事が思い出される。