Japanische Klassiker mit Furigana
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きくやしき
菊屋敷
山本 周五郎
Lesen Sie 菊屋敷 (きくやしき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.620 Zeichen · 71 Bildschirme
と晋太郎を呼び、いっしょに仏間へはいっていった。
「あなたは本当にその着物を頂いて嬉しいと思いますか」ほの暗い部屋の中に相対して坐ると、志保は穏やかな声音でそう訊いた、「……正直にお返辞をなさい、本当に嬉しいとお思いですか」
「はい、お母さま、そう思います」
「でも母さまはそう思って貰いたくないのですよ、晋太郎、これまで母さまが教えてきたことを覚えておいでなら、あなたもそうは思わない筈ですがね」
晋太郎はびっくりしたようにこちらを見あげた。志保はその眼を穏やかに見まもり、寧ろかれの同意を求めるような調子で続けた。
「着せてあげてよいものなら、それくらいの支度を調えることは母さまにもできます、でもお忘れではないでしょう、あなたは武士の子です、やがてはあなた自身も武士として御奉公をするのです、さむらいというものは、いついかなる時にも身命を捧げる覚悟がなくてはならない、暫しという間はない、召されればその場で死ななければならぬものです、……こう云うだけではやさしく思えるでしょうが、その覚悟をやしなうのは一朝一夕のことではありません、ごく幼少の頃から粗衣粗食を守り、寒暑に耐え、身も心も鍛えつづけてこそ、はじめて、どんな困難にであっても撓まぬ人間となれるのです、おわかりでしょう、晋太郎」