Japanische Klassiker mit Furigana
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おちばのとなり
落葉の隣り
山本 周五郎
Lesen Sie 落葉の隣り (おちばのとなり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.877 Zeichen · 57 Bildschirme
おひさは暫くじっとしていたが、やがて小さくかぶりを振ると、涙で濡れた顔をよく拭いて、前掛をおろした。
「なんでもないの」とおひさは微笑した、「かあちゃんに死なれて心ぼそくなっただけよ、ごめんなさい」
「そうだろうけれど、まあ坊がいるからな」と繁次はぎごちなく云った、「おじさんはあんなだから、おめえがしっかりしなくっちゃまあ坊が可哀そうだぜ」
「おかしいのね」おひさはぼんやりと、独り言のように云った、「あの子ったらかあちゃんが死んでも泣かないのよ」
そしておひさは喉で、しゃっくりのような泣きじゃくりの音をさせた。
その夕方、仕事を終ってから、繁次は親方にわけを話して、おひさの家へ悔みにいった。さきにうちを覗くと、母がおひさと増吉に夕飯を喰べさせているところだった。繁次は声をかけておいて、おひさの家へいった。姉弟の父は角造といい、今戸の瓦屋の職人だったが、酒癖が悪く、飲みだすと三日も五日も休みなしに飲み、もちろん仕事には出ないし、酒乱のようになった。そうかと思うとぴたっとやめて、二十日も一と月も一滴も飲まないことがある。そんなときは躯まで小さくなったかと思うほどおとなしく、ろくろく話もできないというふうになるが、飲み始めるとまた同じような結果になるのであった。