Japanische Klassiker mit Furigana
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かや
蚊帳
織田 作之助
Lesen Sie 蚊帳 (かや) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.838 Zeichen · 6 Bildschirme
彼は誘われるままに、旅館に泊った。女はまだ若かった。絶えずせきをしていた。そのせきの音に聴き覚えがあった。彼はなくなった妻よりも新しい妻を想い出した。
「君、胸が悪いんじゃない」
そうきくと、女ははっと彼の顔を見たが、やがてうなずいた。
「駄目じゃないか。こんな商売をしてると、ますます悪くなるよ」
「だって、こんなことでもしなければ薬代も稼げないわ。あたし罹災したのよ」
その言葉に彼は驚いた。
女の手は熱かった。彼は女と背中合わせに寝たが、女の体温は焼けつくように彼の背中に伝わって来た。
彼はふとなくなった妻を想いだしていた。新しい妻のことは想い出さなかった。
彼は女の体温を背中に感じているだけで、もう心は満足していた。それ以上女の体に触れたいという気はなく、狂暴な男の血が一時に引いてしまっていた。
しかし、その旅館の部屋に蚊帳を釣ってあれば、もしかしたら自分は危いかも知れないと、彼は思った。