Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lesen Sie 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.970 Zeichen · 176 Bildschirme
その時彼女は、崖下から、人声らしいものの、聞こえて来るのを聞いた。彼女は狂喜し、地を摺って進み、肩と胸とを、崖縁からはみ出させ、崩れた髪で、額縁のように包んだ顔を覗かせ、崖下を見下ろし、
「もし、どなたかおいででございますか。刀箱を落としましてございます。その辺にありはしますまいか? ……あ、水が飲みたい! 水を汲んでくださいまし」
典膳は、この時、もう岩の上に坐りこんでいたが、女の声を聞いても、耳に入れようとはせず、ただ、女の腕に縋り、それを手頼りに、崖の上へあがろうと、ひしと女の手を握った。
「お願いでございます。この手を、グッとお引きくださいまし。それを力に、私、崖を上がるでございましょう。ご女中、さ、グッとこの手を……」
お浦は、突然手を握られて、ハッとしたが、咽喉の渇きがいよいよ烈しくなって来たので、握られた手を振り放そうとはせず、
「水を! まず、水を! ……その後にお力になりましょう。手をお引きいたすでございましょう。……おお、水を!」
この二人を照らしているものは、練絹で包んだような、朧ろの月であった。
典膳は、やっと、ヒョロヒョロと立ち上がった。