Japanische Klassiker mit Furigana
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きく
親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選
山川 方夫
Lesen Sie 親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選 (きく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 67.486 Zeichen · 144 Bildschirme
女が木彫職人にたのんだのは、等身大のあの若者のすがたに肖せた木の彫刻であった。
秋に入ろうとする頃、ようやく木彫職人の苦心の作は女の部屋に運びこまれた。
退紅の狩衣、縹色の袴、毛抜形の太刀、靴、それに縁のついていない烏帽子などは、すでに女が手をまわして部屋にそろえていた。女はまず生命のない生木の彫像に、いかにそれらを生あるもののごとく巧みに着せかけるかに専心した。女は、やがて職人から数種のノミを借りうけ、彫像に手を加えはじめた。あの若者のすがたは、目をつぶればたちどころに浮かんでくる。まぶたの裏に焼きついているその「彼」を仔細に追い、女は、けんめいに人形を若者に肖せることに没頭した。
終日、窓の外に吊された半蔀を引き上げることもない日々がつづいた。わずかな灯油の光をたよりに、女は全身全霊をうちこみ、寝食も忘れて、あの武士を人形によって再現するため身も細るような努力をくりかえした。ときどき、彼女の独りごとに、その人形がうなずいたり、あのときの若者の声で答えたりするような気がすることもあった。その努力はたのしかった。
やっとその人形が完成したのは、ちょうど仲秋の名月の夜であった。