Japanische Klassiker mit Furigana
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きく
親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選
山川 方夫
Lesen Sie 親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選 (きく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 67.486 Zeichen · 144 Bildschirme
非情な男
私は顔をあげた。やはり彼女だった。
窓ごしに彼女の眼が、哀願するように私をみつめている。
開けてくれというのだ。
黒い窓に、彼女は音をたてる。しだいに強く、執拗に、その音がつづいている。
彼女は身もだえをし、全身で私に合図している。
……だが、私には彼女を部屋に入れてやる気は毛頭ない。だんじてない。そんなことをしたら、かえって面倒なことになってしまうだけだ。
この深夜、ここまで単身でやってくるというのは、彼女にしたらたしかにたいへんな決意だっただろう。それはわかる。恐怖も躊躇もかなぐり捨て、彼女はむきだしの本能そのものに化し、ただ闇雲にそれに忠実になることに自分を賭け、夢中でここまでたどりついたのに違いないのだ。いずれにせよ、よっぽどのことだったとはわかる。……でも、それはいわば彼女の勝手、彼女のエゴイズムだ。私の知ったことではない。
私は目をつぶった。私には、彼女を徹底的に拒絶しぬくほかはないのだ。
明日、私はこの窓の下、硬いコンクリートの上に、冷たくなった彼女の死骸をみつけるだろう。
もはや動かないその彼女に、勤勉な真黒い昆虫たちが蝟集している。