Japanische Klassiker mit Furigana
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おやばかにゅうどうき
親馬鹿入堂記
尾崎 士郎
Lesen Sie 親馬鹿入堂記 (おやばかにゅうどうき) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.182 Zeichen · 24 Bildschirme
明るいといえば部屋全体が何となくあかるい。しかし、彼女の様子を見ると、まだ一日二日後だろうという気がしたので家政婦に一切を頼んで、そのまま家へ帰った。帰るとすぐに冷酒を呷って眠ってしまった。その晩、一時を過ぎる頃である。私は玄関の格子戸のそとから呼びかける井田邸の女中さんの声に呼び起された。
「あのね、唯今、病院からお電話がありまして」
京都から来ている小娘のまさ子(女中の名前)さんの声は、かすかにふるえている。私はびくっとして跳ね起きた。
「たったいま、お産れになったそうです、坊っちゃんだそうで」
私はすぐ寝巻の上から外套をひっかけて、すぐ外へとびだした。夢の中をうろついているような気持である。数時間前、妻から聞いた金の猫の話が、私の頭の中に甦ってきた。さっき、病院に出かけるときには、ふかい闇につつまれていた堤防の上に、小さいランタンが幾つとなくゆれている。それが子供の出生に何かふかい関係があるように思われてきた。
これは五月九日から鮎漁が解禁になったので、遠くからやってきて釣場所の優先権を占めようとする人たちが夜中から待機しているのである。狭い堤防は人の影でうずまっていた。