Japanische Klassiker mit Furigana
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ていそうもんどう
貞操問答
菊池 寛
Lesen Sie 貞操問答 (ていそうもんどう) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.240 Zeichen · 399 Bildschirme
小太郎も、祥子の部屋に遊びに来た。さわやかな午前だった。
女中が、はいって来て、(旦那さまが、お呼びです)と、云った。
二階の書斎へはいって行くと、準之助氏はひどく嬉しそうで、向き合っている新子の方まで、つい頬をほころばしたくなった。
「今、僕部屋をのぞきに行ったの、知っていますか。」
「いいえ、存じません。」
「子供達が、貴女をまるで、母親のようにして、甘えているんで、僕は扉を開けずに、上へ帰って来たんですよ。」新子は準之助氏の視線を避けるようにして、答えなかった。答えようもなかった。
「僕は貴女にお礼をしたいんです。」
「お礼なんて――私が、何を致しましたかしら、祥子さんのご病気を、私が看病するくらい当然じゃございませんかしら。」
「いや、当然なことをしない女だって、沢山いますからな。僕にお礼をさせて下さい、でないと、僕の感情が、どんなふうに爆発するか分りませんよ。」
「そんなこと、おっしゃっては困りますわ。」
「じゃ、お礼を受けとって下さるでしょう。」と云って準之助氏は、自分用らしい白い角封筒を新子の前にさし出した。
新子は、それを断るには、たいへんな努力が要ると思ったので、素直に受けとった。