Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

Lesen Sie 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.416 Zeichen · 53 Bildschirme

Aozora Bunko

……佐八の親方が話しにいったとき、越徳の主人が渋ったのも、また佐八が山谷の家を訪ねたとき、家族の者がひどく冷淡だったのも、それだけの理由があったからなのだ。そして二人はいっしょになった。約一年の生活は、おなかにとって一生に代えても惜しくないほど、仕合せな、満ち足りたものであった。

――あなたとの一年で、あたしはこの世に生れて来た甲斐があったと思いました、こんなに仕合せでいい筈はない、このままではいまに罰が当るにちがいないって、独りのときはよく考えたものです。

火事のとき、おなかの頭に閃いたのは、この「罰が当るにちがいない」という考えであった。そんなばかなことがと、火に追われて逃げながら、自分の愚かしい考えを、否定したが、否定すればするほど、そのおもいは強くなるばかりだった。

もう人の一生分も仕合せにくらした、この火事がその証拠だ。

この火事が、区切りをつけろという証拠だ。そういう言葉が、誰かの囁きのように、頭の中ではっきりと聞えるようであった。佐八は自分が焼け死んだと思うだろう、それで一切のけりがつく、けりをつけるときが来たのだ。そんなふうに思いながら、ふと気がつくと、山谷のうちの前に立っていた。