Japanische Klassiker mit Furigana
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そらとぶあくま
酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕
酒井 嘉七
Lesen Sie 酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕 (そらとぶあくま) von 酒井 嘉七 (さかいかしち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.471 Zeichen · 28 Bildschirme
そうした自分に対してもリークから漏れ出した事実の一節一節は目をおおうている自分の前に静かに流れて来て、いつまでも静止している。自分は箱をそっと開いて、細目をあけた。そして、いつか、じっとその流出物を凝視していた。
私が希望せざるに知らされた事実は、私はK市の生れでないこと、他国で生まれ揺籃のままK市に移されたこと、「ソーベ」と呼ぶ十一違いの異母兄があること、彼の母は早逝したこと、私の母は後添であること、彼女の名は「キセ」といい、兄を座敷牢に閉じ込めたほどに虐待したこと、それがため彼は十四の時に家を出て消息不明なること、最後に、私の母は私の出生直後に病死したのではなく、六七年もの長い病気の後に没したらしいこと、――である。
これだけが「箱」から漏れて来た全部であり、私が杞憂する悪魔はまだ飛び出さない。彼は疑いもなく箱の底に薄気味悪い微笑を面に浮べながら、じっと翼をたたんで蹲っているのであろう。しかし、これだけの流出物からも自分は、はっきりとこの悪魔の体臭を感じることが出来る。――私の母は私の生後四五年もの長い病気を経て他界したという。……いま、またしても、私は自分の頭の中の機械に変調を感じる。