Japanische Klassiker mit Furigana
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のわき
野分
Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme
「まあ、そうだろう」
「泥棒だね。顔泥棒だ」
中野君は小さい声でくくと笑った。休憩時間は十分である。廊下へ出るもの、喫煙に行くもの、用を足して帰るもの、が高柳君の眼に写る。女は小供の時見た、豊国の田舎源氏を一枚一枚はぐって行く時の心持である。男は芳年の書いた討ち入り当夜の義士が動いてるようだ。ただ自分が彼らの眼にどう写るであろうかと思うと、早く帰りたくなる。自分の左右前後は活動している。うつくしく活動している。しかし衣食のために活動しているのではない。娯楽のために活動している。胡蝶の花に戯むるるがごとく、浮藻の漣に靡くがごとく、実用以上の活動を示している。この堂に入るものは実用以上に余裕のある人でなくてはならぬ。
自分の活動は食うか食わぬかの活動である。和煦の作用ではない粛殺の運行である。儼たる天命に制せられて、無条件に生を享けたる罪業を償わんがために働らくのである。頭から云えば胡蝶のごとく、かく翩々たる公衆のいずれを捕え来って比較されても、少しも恥かしいとは思わぬ。云いたき事、云うて人が点頭く事、云うて人が尊ぶ事はないから云わぬのではない。生活の競争にすべての時間を捧げて、云うべき機会を与えてくれぬからである。