Japanische Klassiker mit Furigana
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つげびと
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (つげびと) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.955 Zeichen · 71 Bildschirme
花前は、耳で合点したともいうべきふうをして仕事にかかる。片手にしぼりバケツと腰掛けとを持ち、片手に乳房を洗うべき湯をくんで、じきにしぼりにかかる。花前もここでは、
「どれとどれをしぼるのですか」
と主人に聞いた。
主人はこれとこれとと、つぎつぎ数えてつごう十余頭が乳のでるのだ。それからこの西側から三つめの黒白まだらが足をあげるから、飼い葉をやっておいて、しぼらねばいかぬとつげる。花前はそういう下から、すぐはじめの赤牛からしぼりにかかった。花前の乳しぼる姿勢ははなはだ気にいった。
左の足を乳牛の胸あたりまでさし入れ、かぎの手に折った右足のひざにバケツを持たせて、肩を乳牛のわき腹につけ、手も動かずからだも動かず、乳汁は滝のようにバケツにほとばしる。五分間ばかりで四升あまりの乳をしぼった。しぼった乳は、高くもりあがったあわが雪のように白く、毛のさきほどのほこりもない。主人はおぼえずみごとな腕前だと嘆称した。
乳を受け取って濾しにかけた細君も、きれの上にほこりがないのにおどろいて、
「なるほど、花前はしぼるのがじょうずだ」
と主人のところへ顔をだしてほめる。
花前は色も動きはしない。