Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

Lesen Sie 雑居家族 (ざっきょかぞく) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 140.106 Zeichen · 283 Bildschirme

Aozora Bunko

これがラッシュの朝夕ならば、いくら兵六さんでも虚無になど身をまかせるどころではあるまい。うかうかしていれば、あとからあとからの客にせりのけられ、追いこされざまはねとばされ、そのはずみに階段をころがり落ちてそこでまた念入りにふんづけられたり、けとばされたりさんざんな目にあわぬとも限らぬ。年よりにとってはおそろしい時刻である。だから兵六さんは、もっとも安全なこの時間をえらんで、わが家に近いこの駅に降りたったのである。とはいえ彼は、この足でまっすぐにわが家へ帰る意志はない。女房のおせいがこわいのだった。娘の二三子にも気がおけた。彼は一分一秒でもおそくわが家に帰りたいのだ。しかし、そのためだけにのろのろしているわけではなかった。その、かたつむりのような歩きぶりが、今の兵六さんの肉体的条件にもあっていたのである。

――うん、よいしょ――

前後にだれもいないとみると、兵六さんの口から思わずうなるようなつぶやきがもれる。

――うん、よいしょ――

立ちどまって汗をふく、その顔とおでこに、大きなかすり傷が、あかぐろいあとをのこしている。しかしそれがのろのろの原因ではない。