Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.527 Zeichen · 23 Bildschirme
癇性に身を反らして、ひれ伏す岡ッ引どもを、骨も徹れとばかり睨みつけていたが、ふと、眼を外らして、御用部屋の奥のほうで、頭から絆纒を引ッかぶって寝ている男を見つけると、クヮッと眼尻を釣りあげて、
「だれだ、そこらで寝ころんでいるやつア、面ア出せ、おい」
ゆっくり絆纒をひきのけて起上ると、のっそり囲炉裏のほうへ近づいて来たのは、藤波の右腕といわれるせんぶりの千太、生れてからまだ笑ったことがないという苦ッ面の眉間に竪皺をよせてムンズリと膝を折ると、
「寝ていたわけじゃアありません、泣いてたんでございます。実ァ……」
と言って、ガックリとなり、
「実は、あッしが検死にまいりました。なんとも、お詫びのもうしようもありません」
藤波は、えッと息をひいて、
「おめえが、……おめえが行って縮尻ったとは、それは、どういう次第で……」
まともに顔をふり向けると、
「それが、……赤斑もあれば、死顔は痴呆のよう。下痢したものは、米磨汁のようで、嘔吐たものは茶色をしております。どう見たって、虎列剌に違いねえので……」
藤波は深く腕を組んで考え沈んでいたが、ふいに顔をあげると、
「そりゃア、確かだろうな」