Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かぜ

風

壺井 栄

Lesen Sie 風 (かぜ) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.702 Zeichen · 78 Bildschirme

Aozora Bunko

大きな、しかし、ひそめ声で家の中へ呼びかけているのは、文房具屋のとなりの、菓子屋の若いおかみさんだった。妹らしい女がはだしで飛びだしてくると、

――ほら、あの人の頭!

指し示す方向はいやでも茂緒にわかった。修造の後姿をさして、好奇の目をみはっているのだ。茂緒はつい足がにぶった。自分にはもう見なれてきた彼の長髪を、もう一度見なおさねばならなかった。修造の髪の毛ときたら、ちぢれているのに多いので、むくむくと羊の毛のようにかたまっていて、よけい目だった。茂緒はそれを少しかくしたい気がした。

「帽子も買わない?」

しかし、それは二分ののちにおじゃんになった。少し先の大道の木の下で、洋服屋が莚をひろげた店を開いていたからだ。修造は十五円という玉ラシャの半オーバーを、着たりぬいだりして半時間ほどねばり、五円五十銭にまけさせて買った。よほど気に入ったらしく、さっそく着て歩いた。ならんで歩きながら茂緒は、修造の兄の手紙を思いだしていた。

――こんどこそは、まじめに暮してくれるよう、わしも悪いところがあったとは思うが、母者人への心配もこれを最後にしてもらいたい……。