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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖 (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.957 Zeichen · 114 Bildschirme

Aozora Bunko

さだめし首から先に突ッ込んだのであろう。ぷッ……と濡れ鼠になって喚いたのは旅川周馬。

「一角ッ、早く助剣を!」

いうまに弦之丞は、戸口から外へ足を踏みだした。とたんである。右に添って隠れていた一角の大刀、左に息をのんでいたお十夜の助広が、かれの姿を待ちかまえていた。

足をすくった孫兵衛の刀は、風を流して湯小屋の柱へズンと食いこみ、一角の烈刀は一節切の竹にはね返されて、柄手にきびしいしびれを感じたばかり。

人を斬らんとする程の力で、柱へ斬りこんだそぼろ助広は、とっさ、たやすくは抜きとれないので、気をいらった孫兵衛は刀をそこに残したまま、ダッ――と追って弦之丞の後ろに組みつき、ここぞという一念を拇指にこめて、相手の喉にくいこませたまま、

「一角、わき腹を突け!」と呶鳴った。けれど、寄り進んできた天堂の前には、そう呶鳴った孫兵衛そのものの体が、もんどり打って躍ってきたので、ふりかぶった大刀を無碍にふって落せば、弦之丞を打つ前に、お十夜を両断にしてしまったかもしれない。

この一瞬に三人は、前後も場所がらも時刻も忘れて、すさまじい声と気合を発したのであろう。たちまち、四方に密集している温泉宿の二階や店先には、何ごとかと驚いたふうな人影が立って、またぞろ静かな温泉の町の平和はおびやかされてしまった。