Japanische Klassiker mit Furigana
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たそがれ
黄昏
宮本 百合子
Lesen Sie 黄昏 (たそがれ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.500 Zeichen · 29 Bildschirme
「阿母(おっか)さん、ここで乗換えよ」
と娘に注意されなければ、彼女は、乗換場に来ても、場席から立つことさえ知らなかっただろう。
おくめは、久し振りで姉娘に対面しようとして、歓びとも不安とも分ち難い胸の轟を覚えていた。ともすれば、連関して、忘れたい過去の記憶が甦って来る。外見には、田舎出らしい態度の隙を現しながらちらちら、目路(めじ)を掠める賑やかな燈光のかげに、おくめは、おぼつかなく昔と今とを照し合わせた。
のぶ子に導かれるのを幸いに、どこをどう曲ったも考えず、相田の小綺麗な格子の前に立たされたのである。
表通りの薬種の店から、ちょっと入ったその格子戸の内部は、いつもながら、ふさ子の几帳面な性格を表すように、さっぱり掃き浄められていた。
真新らしい障子がひっそりと閉って、沓脱石には、見馴れぬ男下駄が揃えてある。
先に立って格子に手をかけたのぶ子を押し止めるように、おくめは、
「お客様じゃないか、若し、何だといけないから」
と囁いた。
「大丈夫よ。私だけ先へ行って見るから」
のぶ子は、そっと沓脱の端から上って行った。障子をあけ、唐紙の開く音がし、やがて半分も経つと、また、のぶ子が、玄関迄出て来た。