Japanische Klassiker mit Furigana
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こうとう
黄灯
田中 貢太郎
Lesen Sie 黄灯 (こうとう) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.262 Zeichen · 21 Bildschirme
それは己が周章ているので好く捲けないと思った。で、主翁は気を引き締めてまた紐を頸にやった。が、その紐も手許にもどって来た。
主翁は震い震い引返して来たが、書生の顔を見るのが恐ろしいので、俯向いたなり小声でおずおずと云った。
「どう云うものか、放ねかえって捲きつきません」
「そうか、捲きつかんかも判らない、ではこれを枕頭に置いて来い」
書生は懐から小さな石を二つ出してそれを見せた。
「これを殿様の枕頭へ置いて来い、どこへ置いても好い、この石なら大丈夫だ、置いて来い」
主翁は小紐を持ったなりにその小石を受とって、また伯爵の方へ往って、枕頭へそっと置いて逃げるように帰って来た。
「こっちへ来い、ここでは紐が捲けそうもないから、捲ける処へ往こう」
書生は扉を開けて出ようとしてふり返った。主翁も引きずられるように跟いて往った。主翁は庭前を歩いていた。庭には池の水が暗い中に鼠色に光っていた。池の縁を廻ると離屋の縁側になった。書生は縁側へあがって微暗い室の障子を開けた。
奇怪な絵画がそこに見られた。榻に寝た女が蒼白い左手を張り、その掌で左の耳元を支えて、すぐ鼻端に腰をかけた男とはなしているところであった。