Japanische Klassiker mit Furigana
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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Lesen Sie 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 296.741 Zeichen · 584 Bildschirme
その時は、脳質が圧迫されるので、窒息に類した徴候が表われるそうだよ。しかし、これほど顕著なものじゃない。だいたいこの死体のは、そういった頓死的なものではないのだよ。じわじわと迫っていったのだ。だから、むしろ直接死因には、咽輪の方に意味がありそうじゃないか。無論気管を潰すというほどじゃないが、相当頸部の大血管は圧迫されている。すると、易介がなぜ悲鳴を上げなかったか――判るような気がするじゃないか」
「フム、と云うと」
「いや、結果は充血でなくて、反対に脳貧血を起すのだよ。おまけに、グリージンゲルという人は、それに癲癇様の痙攣を伴うとも云っているんだ」と法水はなにげなさそうに答えたけれども、なにやら逆説に悩んでいるらしく、苦渋な暗い影が現われていた。熊城は結論を云った。
「とにかく、切創が死因に関係ないとすると、この犯行は、恐らく異常心理の産物だろう」
「いやどうして」と法水は強く頸を振って、「この事件の犯人ほど冷血な人間が、どうして打算以外に、自分の興味だけで動くもんか」
それから、指紋や血滴の調査を始めたが、それには、いっこう収穫はなかった。わけても甲冑の内部以外には、一滴のものすら発見されなかったのである。