Japanische Klassiker mit Furigana
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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Lesen Sie 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 296.741 Zeichen · 584 Bildschirme
階下の礼拝堂から湧き起ってくる鎮魂楽の音が、セロ・ヴィオラと低い絃の方から消えはじめていって、しだいに耳元から遠ざかって行くのでしたが……、かと思うと、それがまた引き返して来て、今度は室内一杯に、磅と押し拡がってしまうのでした。しかし、その律動的な、まるで正確なメトロノームでも聴くような繰り返しが、しだいに疲労の苦痛を薄らげてまいりました。そして、非常に緩慢ではございましたけれども、徐々と私を、快い睡気の中へ陥し込んでいったのです。ですから、曲が終って、私の手足が再び動きはじめてからも、私の耳には、鐘の音は聴えず、絶えずあの音を持たない、快い律動だけが響いてくるのでした。ところが、その時でございます。突然私の顔の右側に、打ち衝ってきたものがありました。すると、その部分に衝が起って、かっと燃え上ったように熱っぽく感じました。けれども、その刹那、身体が右の方へ捻れていって、それなり、何もかも判らなくなってしまったのです。その瞬間でございましたわ――私が、刳り込みの天井に蛾を見たのは。しかし、今朝がた行って見ますと、その蛾はいつのまにか見えなくなっていて、ちょうどその場所には、蝙蝠が素知らぬ気な顔でぶら下っているだけでした」