Japanische Klassiker mit Furigana
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あなたもわたしも
あなたも私も
久生 十蘭
Lesen Sie あなたも私も (あなたもわたしも) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.405 Zeichen · 263 Bildschirme
夕日が流す朱の色で、空も、海も、燃えあがるように赤く染まっていたが、葉山のあたりの空が、だんだん透きとおった水色にかわり、そこから、のっと大きな月が出た。
漁船をだし、底引の錨繩で海の底をさぐりはじめてから、もう三時間以上になる。
庭端の芝生に膝を抱いてすわり、海の底をさぐりながら、澗のなかを行きつ戻りつしている漁船を、身を切られるような思いで、サト子は、ながめていた。
この庭端に影のようにうずくまっているのを知りながら、舳に立って潮道を見ている中年の私服も、パンツひとつの警官も、サト子を無視することにきめたふうで、ふりむいて見ようともしない。
「バカめ、殺したのはお前なんだぞ」
警官たちの冷淡な身振りのなかに、無言の叱責がこもっているのを、サト子は感じる。
「だから、あたしに、どうしろというの?」
サト子は、やりきれなくなって、足をバタバタさせる。
あの青年が海に飛びこんで、みなの見ているところで溺れて死んでしまうなどと、たれが予想したろう。
漁夫も、警官も、漁舟も、月のしずくをあびて銀色に光っている。
「こんな澗のうちを、ひっかきまわしたってよウ、死体なんざ、あがりっこ、あるかよ」