Japanische Klassiker mit Furigana
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あなたもわたしも
あなたも私も
久生 十蘭
Lesen Sie あなたも私も (あなたもわたしも) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.405 Zeichen · 263 Bildschirme
外国の映画では、これによく似た夢のような場面をいくどか見たが、東京の山の手に現実にこんな生活をしていた人間がいたとは、貧乏で衰弱したサト子の頭では、どうしても納得しかねた。
次の日の朝、芳夫から電話がきた。
「いまの家、気に入りましたか」
「気に入ったなんて段じゃないわ、あまりすごいので、おろおろしているのよ」
「気に入ったら、買ったらどうです? 千万ぐらいで話がつくと思いますが」
サト子は三万ドルの紙幣のはいっている、空色の飛行鞄のほうへ振り返りながら、この家も、買えば買えるのだと思うと、いままではたいして気にもしていなかった十三億という金の効用が、あらためて意識にのぼって、ぞっと鳥膚をたてた。
「途方もないことをいうのは、やめてちょうだい……それでなくとも、バカなことをやりだしそうで困っているんだから」
宙に浮いている感じは、スポンジの寝椅子に寝るときだけではなくて、ここの生活自体が、雲の上の青い天界を散歩しているような、のどかなおもむきがあった。
朝の九時、メードがそっとカーテンをあけにくる。サト子が食事をと言うと、ひとりは寝室用の細長い朝食膳を、ひとりはオレンジの果物盃や、ジャムの壺や、生クリームや、コォフィや、焼立てのプチ・パンなどを載せた盆を持ってはいってくる。