Japanische Klassiker mit Furigana
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あなたもわたしも
あなたも私も
久生 十蘭
Lesen Sie あなたも私も (あなたもわたしも) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.405 Zeichen · 263 Bildschirme
横須賀まで送ってくれるつもりなら、ここで待っていて」
そういうと、サト子は、後もみずに石段を駆けあがった。
ほのかな間接照明が、陳列室にたそがれのような、ものしずかな調子をつけ、高低さまざまなケースのなかで、壺や、甕や、水差や、陶碗が、肩の張りと腰のふくらみに、古代の薄明をふくみながら、ひっそりと息づいている。
ケースのうえから、壺の口づくりのぐあいをながめているひとがある。足高のケースにおさまった壺の底づきぐあいを、ガラス越しに、よつんばいになって下から見あげているひとがある。そういう作法が、こっけいで目ざわりで、気が散ってしようがなかったが、そのうちに、まわりの現象が感覚からぬけ落ち、壺とじぶんだけの、しんとした世界になった。
サト子は、ゆっくりとケースをのぞいて行ったが、そのうちに、はっとするような深い色に目を射られて、思わず足をとめた。
おおどかに伸びあがった、無口瓶の荒地のままの膚に、ルリ色とも紺青ともつかぬガラス質のものが、一筋、流れている。
「なんという、いい色」
壺どもの腰の線は、一流のファッション・モデルの腰の線よりも、美しい。それだけでも、おどろかれるのに、このもろいセトモノどもは、サト子の年の、百倍も長く生きつづけてきたのだと思うと、なにか、はるばるとした気持になる。