Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
おごそかなかわき
おごそかな渇き
山本 周五郎
Lesen Sie おごそかな渇き (おごそかなかわき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.042 Zeichen · 71 Bildschirme
隆二が全財産を投げだすまえ、網元としての松山家を再建しようとして、けんめいに奔走してまわった。濃紺色の海が荒れて白く泡立ち、もう大陸からの寒風が吹きだしていた。こまかい粉雪の舞う風に吹かれながら、厚く着ぶくれ、防寒帽をかぶった高川叔父が、むだな奔走に出てゆき、疲れきって帰って来るのを、隆二はいたましいとも思い、愚かしいとも思った。あらゆるものに成長の限度があるように、網元として三代、松山家も命数が尽きたのだ、と彼は信じていた。それは現実からはなれた、一種の宗教的な確信のようであった。
松山隆二は全財産を投げだし、母の治療費を除いて、全額を難破した漁師や、船員の遺族たちに配分した。むろん満足な額ではなかった。保険金を加えても、――だが遺族たちは不平も云わず、却って松山家の倒産を悲しんでくれた。
――親方と子方との、ながい伝習のつながりを断ち切ることがこわいのだ、現実よりも感情的にその日を避けようとしている、それでどうなる。
漁業のやりかたも大きく変った。網元式の封建的な作業は、大資本の合理的操業に勝てないばかりか、しだいに圧迫され追いやられるという事実が、もうはっきりし始めていた。