Japanische Klassiker mit Furigana
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おごそかなかわき
おごそかな渇き
山本 周五郎
Lesen Sie おごそかな渇き (おごそかなかわき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.042 Zeichen · 71 Bildschirme
六
そういう汚濁の中でこそ、人間は生きることができ、なにかを為そうという勇気をもつのではないか。
――東西の神話はみな混沌から始まっている、いまでも混沌の中で人間はうごめき、なにかを為そうとして汗を流す、ソドムとゴモラ、それこそおれの求めるものだ。
松山隆二はそう思った。しかし、本当にそうだろうか、そういう汚濁の中で、本当に生きる精神力があるだろうか、彼はそっと呻いた。
「どうです」とねむたそうな声で竹中が問いかけた、「いっそのことぼくたちといっしょにブラジルへゆきませんか」
隆二は答えなかった。
「もう眠っちまったのかな」と竹中は独り言を云って、寝返った、「――若い者は暢気なもんだな」
六
強い風が吹いたり、やんだりし、ちらちらと粉雪が舞ったり、急に晴れてあたたかく陽が照ったりした。勾配の急な、細い坂道をおりてゆきながら、枯れた芒のざわめきや、林の揺れる枝音を聞き、狭い谷間の静かなけしきを見やり見やり、松山隆二は陽が照ってくると眼を細めたり、粉雪が舞いだすと背広の衿をかき合わせたりした。
「あの林の木々は、それぞれうたったり、嘆いたり、訴えたりしている」と彼は呟いた、「一つとして同じ嘆きや唄や悲しみはない、――みんなそれぞれ違った個性をもっている、しかし、それはほかの木には理解されることがない。