Japanische Klassiker mit Furigana
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おごそかなかわき
おごそかな渇き
山本 周五郎
Lesen Sie おごそかな渇き (おごそかなかわき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.042 Zeichen · 71 Bildschirme
「間違いだ、まるで思い違いだ」彼は表情をひき緊めて、立ちあがりながら云った、「――人間には自然を征服するどころか、破壊することもできやしない、山を崩し、谷を埋め、海や川を改変し、死の灰で地を蔽っても、自然の一部に小さな、引っ掻き傷をつくるくらいがせきのやまだ」
松山隆二は坂を登りながら思った。いちど台風や豪雨や旱魃がくれば、人間の造りあげたものなどはけしとんでしまう。それは自然の脈動と呼吸だ、人間はその中で生きているのだ、悲しみや絶望、よろこびや貧窮、戦争や和平、悪徳や不義の中にさえ、自然の脈動や呼吸は生きているのだ。
「だがそれだけではない、なにかはかり知れない力が人間を支えている」と彼は呟いた、「どんなに打ちのめされ叩き伏せられても、それで諦めたり投げてしまったりはしない、切れた堤を築き直し、石を一つずつ積み、崩れた崖を均らし、流された家を再建したりして、逞しく立ち直ってゆく、――これはただ自分の生活を取り戻したいからだろうか、いや、そうは思えない、表面的にはそう見えるが、決してそれだけではない」
もう峠の頂上に近く、坂道の勾配はゆるくなったが、風が強くなると、こまかな雪がちらちら舞いだした。