Japanische Klassiker mit Furigana
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おごそかなかわき
おごそかな渇き
山本 周五郎
Lesen Sie おごそかな渇き (おごそかなかわき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.042 Zeichen · 71 Bildschirme
「りっちゃん」と彼は口をあいた、「こんなところへ、どうしたの」
「あたし先まわりをして待ってたの、お兄さんといっしょに東京へゆくのよ」
村にいるときは「おじさん」と呼んだ。いまはお兄さんと云うし、その云いかたには意識的な媚さえ感じられた。
「お父さんが心配しているだろう」
「心配なんかするもんですか」りつ子は云った、「あしたお嫁さんが来るんですもの、そいで、いっしょに二人っきりでブラジルへいくんですもの、あたしのことなんかなんとも思ってやしないわ」そしてまた云った、「きっと厄介者がいなくなって、さばさばしてるにちがいないわ、きっとそうにきまってるわ」
「――こんどのお母さん、そんなに嫌いなの」
「そのことだけはきかないで、口に出すのもいやらしいわ」
「でもね」隆二はなだめるように云った、「ぼくは金もないし、無銭旅行のようなものなんだよ、本当に東京までゆけるかどうかさえわからないんだよ」
「あたし乞食をしたって平気よ」とりつ子は自慢そうに云った、「東京からこっちへ来る途中でも、幾たびか乞食のようなまねをしたことがあるわ、ほんとよ」
隆二は心臓に痛みを感じた。まだ十歳にもならない少女のころ、父親といっしょとはいえ、乞食のようなまねをしながら、見知らぬ国へ旅をして来たという。