Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

おせん

おせん

邦枝 完二

Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

あたしゃ何も、辛抱しないたいやァしないよ。ええ、辛抱しますとも、夜中ンなろうが、夜が明けようが、ここは滅多に動くンじゃないけれど、お前がもしか門違いで、おせんの家でもない人の……」

「そ、それがいけねえというんで。……いくらあっしが酔狂でも、若旦那を知らねえ家の垣根まで、引っ張って来る筈ァありませんや。松五郎自慢の案内役、こいつばかりゃ、たとえ江戸がどんなに広くッても――」

「叱ッ」

「うッ」

帯ははやりの呉絽であろう。引ッかけに、きりりと結んだ立姿、滝縞の浴衣が、いっそ背丈をすっきり見せて、颯と簾の片陰から縁先へ浮き出た十八娘。ぽつんと一本咲き初めた、桔梗の花のそれにも増して、露は紅より濃やかであった。

明和戌年秋八月、そよ吹きわたるゆうべの風に、静かに揺れる尾花の波路。娘の手から、団扇が庭にひらりと落ちた。

二

顔を掠めて、ひらりと落ちた桔梗の花のひとひらにさえ、音も気遣う心から、身動きひとつ出来ずにいた、日本橋通油町の紙問屋橘屋徳兵衛の若旦那徳太郎と、浮世絵師春信の彫工松五郎の眼は、釘着けにされたように、夕顔の下から離れなかった。

が、よもやおのが垣根の外に、二人の男が示し合せて、眼をすえていようとは、夢想もしなかったのであろう。