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Japanische Klassiker mit Furigana

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おせん

おせん

邦枝 完二

Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

娘は落ちた団扇を流し目に、呉絽の帯に手をかけると、廻り燈籠の絵よりも速く、きりりと廻ったただずまい、器用に帯から脱け出して、さてもう一廻り、ゆるりと廻った爪先を縁に停めたその刹那、俄に音を張る鈴虫に、浴衣を肩から滑らせたまま、半身を縁先へ乗りだした。

「南無大願成就。――」

「叱ッ」

あとには再び虫の声。

京師の、花を翳して過す上臈達はいざ知らず、天下の大将軍が鎮座する江戸八百八町なら、上は大名の姫君から、下は歌舞の菩薩にたとえられる、よろず吉原千の遊女をすぐっても、二人とないとの評判娘。下谷谷中の片ほとり、笠森稲荷の境内に、行燈懸けた十一軒の水茶屋娘が、三十余人束になろうが、縹緻はおろか、眉一つ及ぶ者がないという、当時鈴木春信が一枚刷の錦絵から、子供達の毬唄にまで持て囃されて、知るも知らぬも、噂の花は咲き放題、かぎ屋のおせんならでは、夜も日も明けぬ煩悩は、血気盛りの若衆ばかりではないらしく、何ひとつ心願なんぞのありそうもない、五十を越した武家までが、雪駄をちゃらちゃらちゃらつかせてお稲荷詣でに、御手洗の手拭は、常に乾くひまとてないくらいであった。

橘屋の若旦那徳太郎も、この例に漏れず、日に一度は、判で捺したように帳場格子の中から消えて、目指すは谷中の笠森様、赤い鳥居のそれならで、赤い襟からすっきりのぞいた