Japanische Klassiker mit Furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme
おせんが雪の肌を、拝みたさの心願に外ならならなかったのであるが、きょうもきょうとて浅草の、この春死んだ志道軒の小屋前で、出会頭に、ばったり遭ったのが彫工の松五郎、それと察した松五郎から、おもて飾りを見るなんざ大野暮の骨頂でげす。おせんの桜湯飲むよりも、帯紐解いた玉の肌が見たかァござんせんかとの、思いがけない話を聞いて、あとはまったく有頂天、どこだどこだと訪ねるまでもなく、二分の礼と着ていた羽織を渡して、無我夢中は、やがてこの垣根の外となった次第。――百匹の蚊が一度に臑にとまっても、痛さもかゆさも感じない程、徳太郎の眼は、野犬のようにすわっていた。
「若旦那」
「黙って。――」
「黙ってじゃァござんせん。もっと低くおなんなすって。――」
「判ってるよ」
「そんならお速く」
「ええもういらぬお接介。――」
おおかた、縁から上手へ一段降りて戸袋の蔭には既に盥が用意されて、釜で沸した行水の湯が、かるい渦を巻いているのであろうが、上半身を現わにしたまま、じっと虫の音に聴きいっているおせんは、容易に立とうとしないばかりか、背から腰へと浴衣の滑り落ちるのさえ、まったく気づかぬのであろう。