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Japanische Klassiker mit Furigana

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あじさい

たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集

佐藤 春夫

Lesen Sie たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集 (あじさい) von 佐藤 春夫 (さとうはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.277 Zeichen · 84 Bildschirme

Aozora Bunko

煙草の灰だの夜ふけのピアノの音だけはわたくしにもよくわかります。それでいて閣下にありありと見えるというものが一つも見えないというのは何とももどかしくてなりません。

あんなにわたくしが愛し、わたくしをも愛していたはずの三郎が、父にだけは一挙一動あざやかに現われて、わたくしには見えないと云うのが恨めしいばかりでした。その憾を云うと、閣下が申しますに、

「一たい、幽明の境を超越してものを見る能力――(というのだが、唯の癖かも知れないが)――は、それぞれに人間の生れつきによるものらしい。吾輩には(というのは閣下自身のこと)その癖があると見えて今までにも二三度もその経験があった。一度などはN中佐もきっとおぼえているだろうが満洲で、将校斥候に出したSという大尉が騎馬で馬蹄の音も元気よく帰って来ての敵状報告にもとづいて作戦し、それで戦果も挙げた程であったが、後にわかったところでは、S大尉は敵陣に近い高梁畑のなかで乗馬もろとも屍体となって発見された。その時のS大尉の乗馬すがたも、自分には熱気を吐き出してふくらむ馬の鼻の穴まではっきりと見えて怪しむ余地もなかったのに、他の人々は誰もまるで見聞きできなかったのでへんだと思ったという。